Nikkor-S Auto 50mm F1.4

このレンズは、ニコン Fマウントの50mmで初の F1.4を実現したレンズである。フィルムカメラのニコン Fと同時期に販売されていた。

この時期のレンズは反射防止のコーティングが施されておらず、逆光には強くない。しかし、光を素直に透過しているからか、色合いがすっきりしており、諧調表現が自然であるように感じる。後に販売される多層膜コーティングが施されたニッコールよりも、得られる画の雰囲気としては好みである。

ニッコール-S オート 50mm F1.4の良い点を挙げると次のとおり。

・　絞り f1.4ではフレアがかった柔らかな描写を楽しみ、f2〜f2.8程度まで絞り込むとクリアかつ高解像度の表現を楽しめる。

・　絞りf1.4では独特な色調の写真となる。オールドレンズの味わいを楽しめる。

・　絞り込めば高い解像度になり、階調と色合いも自然になる。

・　艶のある黒色ペイント、銀色のリムの塗装、銘板に刻まれた白文字が美しい。

このレンズの気になる点は次のとおり。

・　絞り開放においてフレア等の収差が生じた状態であるので、ピント合わせを行う際、フォーカスリングを往復させても、ピントの山が掴みにくい。特に画面の中間領域を使う場合、例えば縦位置のポートレート撮影などのとき、被写体の顔や目に正確なピントを合わせることが難しく、失敗することがしばしばある。

このレンズは、絞り開放付近で使うと、諸収差が満載の描写となり、いかにもオールドレンズという画が得られる。

絞り値の設定により色調や解像感をコントロールできるので面白い。

【スペック】

レンズ構成：　5群7枚（ガウスタイプ）

最小絞り：　16

最短撮影距離：　0.6m

フィルターサイズ：　52mm

重量：　325g

フード：　HS-1

［参考］ニッコール千夜一夜物語　第四十四夜

https://www.nikon-image.com/enjoy/life/historynikkor/0044/index.html

作例1 焦点距離50mm、絞りf1.4

作例2 焦点距離50mm、絞りf2

作例3 焦点距離50mm、絞りf5.6